合意の上だと思っていた関係を、後になって「本当は同意していなかった」と言われたら、どうなるのでしょうか。漫画村事件の当事者として知られる星野ロミ氏が、不同意性交をめぐる“恐喝”まがいのトラブルの怖さと、その背景にあると考える日本の刑事司法の問題について話しています。この記事では、その主張を整理して紹介します。
「一方的な証言で人生が終わる」という危機感
星野氏によると、富裕層や著名人と食事をする機会が多い中で、女性に「はめられた」という話をよく聞くそうです。しかも一つや二つではないといいます。
星野氏が挙げるのは、たとえば次のような流れです。二人で出かけたり食事をしたりして親しくなり、合意の上でホテルへ行く。ところが後日、女性が「仕事の関係があって断りにくかった。本当は同意していなかった」と言い出す。こう言われた時点で、男性に残る選択肢はお金を払うか刑務所に行くかくらいしかない、と星野氏は話します。
さらに、女性側に「恋人に知られたくない」といった事情がある場合は、お金で解決することすらできず、刑事事件になるしかないこともあるといいます。
なお星野氏は、不同意性交の訴えがすべて悪いと言っているわけではないとも断っています。実際に女性の意思に反して行われるケースがあることは認めたうえで、一方の証言だけで「同意がなかった」とされてしまう仕組みは不公平だ、というのが主張の中心です。
交通事故の被害に遭った人なら周りは同情してくれるが、性犯罪で捕まれば刑務所に入るだけでなく、一生「レイプ犯」と呼ばれ続けることになる。星野氏はこの点も、社会的なダメージの大きさとして強調しています。
狙われやすいのは「お金を持っている人」
星野氏の見立てでは、標的になりやすいのはまずお金を持っている人です。相手が裕福だと分かったうえで近づいてくるケースが少なくないといいます。お酒が入った後に関係を持つことの危うさは、こうした話をいくつか聞けば分かるはずだ、とも語っています。
対策として、極端な例ながら、関係を持つ前に相手と「同意の契約書」を交わしている会社経営者もいるそうです。聞いた人は笑うかもしれないが、もしかするとそこまでしなければならない時代なのかもしれない、と星野氏は話しています。
痴漢冤罪の「アップグレード版」
星野氏は、この問題を痴漢冤罪と比べています。20年ほど前には痴漢の冤罪が多発した時期があり、電車を降りたところで腕をつかまれて警察に連れて行かれれば、それだけで逮捕されてしまう状況だったといいます。刑事事件にされないためには、50万〜60万円ほどの示談金を払うしかなかったという認識です。
これに対して不同意性交の場合は、要求される金額が数百万円から数千万円にのぼる、と星野氏は指摘します。だからこそ「痴漢冤罪のアップグレード版」だというわけです。
「やっていないなら逃げろ」と言う弁護士たち
痴漢冤罪への対処法として星野氏が紹介するのは、2016年3月に放送された『行列のできる法律相談所』での一場面です。北村弁護士が「本当にやっていないなら、逮捕される前にその場を立ち去れ」と話し、出演した弁護士4人のうち3人が「立ち去る」を支持したといいます。
弁護士が「捕まりたくないなら逃げろ」と言うほどの状況だ、というのが星野氏の受け止めです。ただ、不同意性交の場合はたいていLINEなどの連絡先をすでに交換しているので、逃げることもできません。科される刑も重く、星野氏は7〜10年ほど刑務所に入ることになると話しています。それを避けるには1000万円規模のお金を払うしかない。しかも払ったとしても、後になって情報がネットで暴露されるおそれは残る、というのが星野氏の見方です。
女性専用車両への疑問
話の途中で、星野氏は女性専用車両にも触れています。電車内の痴漢を怖がっているのは被害に遭う女性だけではなく、冤罪をかけられたくない男性も同じように怖がっている。それなのに男性専用車両はない。星野氏はこれを鉄道会社による差別ではないかと疑問を投げかけています。
本当に怖いのは「機能していない裁判」
星野氏がいちばん問題だと考えているのは、トラブルそのものよりも、その先にある裁判が適切に機能していないことです。
否認すると出られない
星野氏によると、日本の刑事裁判ではほとんどの人が罪を認めます。その理由は勾留の長さにあるといいます。一度逮捕されると最低でも10日間は出られず、否認すれば勾留はさらに延びていく。「最長でも23日で出られる」と考えている人もいるが、それはまったくの誤解で、否認している事件では半年、1年、あるいは2〜3年と身柄を拘束されることも珍しくない、と星野氏は話します。否認事件では保釈が認められにくいからだといいます。
星野氏自身も否認したまま約1年半争い、その間保釈は認められなかったそうです。一方、同じ漫画村事件で罪を認めた共犯者は、2カ月ほどで出られたといいます。
もともと有罪率は99.9%と言われているのに、自白すれば有罪はほぼ確実になる。それでも自白しなければ保釈されない。
星野氏はこの仕組みを「人質司法」と呼ばれるものだと説明し、「自白しなければ外に出さない」と迫るやり方は江戸時代の拷問とほとんど変わらない、とまで言っています。
「やっていないなら耐えられる」は本当か
やっていないなら耐えればいい、と考える人もいるでしょう。しかし星野氏は、1年半も勾留されれば会社を解雇され、家族の生活も、支えている年老いた親の暮らしも崩れてしまうと指摘します。IT分野の事件でも証拠が軽く扱われることが多く、実刑にならないのであれば自白したほうがいいと勧める弁護士さえいるそうです。
星野氏は、福岡で勾留されていたときの体験も話しています。面会室はいくつかのブースが並んでいて、隣の声が聞こえることがあったそうです。隣のブースでは、ある人が泣きながら弁護士に「本当にやっていないから認められない。どうすればここから出られるのか」と訴えていたといいます。その人がその後どうなったのかは分からないものの、おそらく有罪になったのだろう、と星野氏は振り返っています。「やっていないなら大丈夫」と考えられるのは、日本の裁判を経験したことがない人だけだ、というのが星野氏の実感です。
「表向きはきれいな国」への問いかけ
最後に星野氏は、日本は治安がよく有罪率も高いと言われる一方で、痴漢冤罪が怖くて満員電車に乗れない人や、親しくなった女性とも気軽に遊べない人がいる、と全体をまとめています。やっていない人にも自白を迫り、長く勾留して苦しめる仕組みがある以上、見た目を整えているだけなら北朝鮮と変わらない、というのが星野氏の厳しい評価です。
星野氏は、外国人観光客には整った街並みだけを見せている北朝鮮を例に挙げ、日本も表面上はすてきな国に見えるが、法律の面では大差ないと語っています。肉体的な拷問はないものの、長期間の勾留はそれ自体が一種の拷問だ、という主張です。
星野氏の主張は、自身の勾留体験と周囲から聞いた話をもとにした一方の側からの見方です。それでも、合意の有無をどう確かめるのかという問題と、否認すると身柄の拘束が長引く刑事手続きのあり方は、ひとつの事件にとどまらない論点として考えてみる価値がありそうです。
参考動画
- 「やっぱ不同意だった」不同意性交を使った“恐喝”がヤバすぎる(【漫画村】星野ロミの裏知識チャンネル)