トヨタV35Aツインターボのリコールは「良くなってから悪くなった」? 整備士が新たな検査方式に疑問を呈する理由

静かにデビューしたエンジンが、問題の中心になるまで

トヨタのV35Aは、排気量3.4リッターのV6ツインターボエンジンです。最初に載ったのは2018年のレクサスLS500で、このときは目立った話題にもなりませんでした。動画の投稿者によると、LS500は生産台数が少なく、オーナーがネットで車について発信することもあまりなかったため、新しいエンジンのひとつとして目立たずに市場へ出ていったそうです。

状況が変わったのは2022年、このエンジンがタンドラとレクサスLX600に載ってからです。とくにLX600は「意外かもしれないが、本当によく売れている」と投稿者は言います。台数が一気に増えると、エンジンの故障率が懸念されるようになりました。

最初は「新型の立ち上がりにはよくあること」と受け止められていました。1年目、2年目なら仕方ないという空気です。ところが3年目になっても問題は収まらず、「これはまずい」という見方が広がっていきました。

エンジンをまるごと交換するという「トヨタらしい」対応

投稿者がここで高く評価しているのは、トヨタの対応の仕方です。トヨタは工場でエンジンを洗浄する工程に問題があり、加工時に出た切りくずなどの異物がエンジン内に残っていたことを認めました。そのうえで、対象車のエンジンを丸ごと交換するリコールを発表しています。

投稿者はこれを「トヨタ史上でも最大級の思い切ったリコール」と表現しています。会社にとって莫大な出費で、「これで利益が残るのか分からない」ほどだといいます。それでも、損益より評判と顧客を優先したことには敬意を払うべきだという立場です。「誰も完璧ではない。間違えたら正せばいい。それがトヨタのやり方だ」と語っています。

交換作業は段階的に進められています。プログラムを書き換えれば済む修理とは違い、エンジンの交換は大仕事です。交換用エンジンもすぐに大量に用意できるわけではありません。そのため「2週間で全部交換」とはいかないことに、投稿者は理解を示しています。

拡大するリコールと、残る疑問

一方で、すっきりしない点もあったといいます。リコールの対象は後から広げられ、2024年モデルの非ハイブリッド車にまで及びました。投稿者は「異物が原因と分かったのなら、もっと早く洗浄工程を直せたはずでは?」と首をかしげています。

さらに、タンドラのハイブリッド車のオーナーは対象から外されたままだと指摘します。ハイブリッド車にも走行中に動力を失ったという報告があるそうです。投稿者は「欲張っているわけではない」と前置きしたうえで、トヨタにこの点を見てほしいと訴えています。

「良くなってから悪くなった」新たなリコールの中身

投稿者が強く問題視しているのが、新たに発表されたリコールです。動画の時点では、まだ実施が始まっていない内容です。

投稿者の説明では、全車のエンジンを交換するのではなく、マイクで拾ったエンジン音をコンピューターが解析し、交換が必要かどうかを判定する方式です。メインベアリングの摩耗や損傷に特有の音(周波数)が検出されればエンジンを交換し、検出されなければ問題なしと判断する、という仕組みのようです。

投稿者がNHTSA(米国道路交通安全局)に提出された資料を読んだところ、「プログラムでエンジンの良否を判断できない場合はエンジンを交換する」とも書かれていたそうです。投稿者はこれを、コンピューターが判定しきれないケースもあると認めているようなものだと受け止めています。

音で分かる段階では、もう壊れ始めている

投稿者の疑問はシンプルです。自分は昔ながらの人間なので仕組みをすべて理解しているわけではないと断ったうえで、こう述べています。

  • ベアリングの異常が音で分かるのは、すでに損傷が進み、軽い打音が出始めた段階ではないか
  • 検査で「問題なし」とされたエンジンが、1万マイル(約1万6千km)走ったあとに壊れたらどうなるのか
  • そのときトヨタは「リコールは実施済み」と政府向けのチェック欄を埋めるだけなのか。それとも責任を持って対応するのか

投稿者は、自宅から400マイル離れた旅先で、家族を乗せてトレーラーを引いている最中にエンジンが壊れる場面を例に挙げます。オーナーが心配しているのはまさにそういう状況で、「単純なコンピューターの判定に、ブランドの評判を賭けているようなものだ」と言います。投稿者は、これは信頼を損なう行為であり、自分の知る「トヨタのやり方」ではないと述べています。過去にフレームの腐食問題が起きたとき、トヨタは期待以上の対応をしたと振り返り、それと比べて今回は後退していると見ています。

7万ドルのトラックに求められる品質

話はエンジン以外の品質にも及びます。投稿者自身も2024年式のタンドラを持っていて、「すばらしいトラックで、とても気に入っている」と語っています。家族の送り迎えのためではなく、仕事で使うために買ったそうです。

それでも、品質面の不満ははっきりしているといいます。

  • 車内のあちこちから出るきしみ音やガタつき
  • 塗装の仕上がりの悪さ
  • クロームメッキ部分の塗装の剥がれ
  • パーツ表面の剥がれや、操作ボタンの脱落

「トラックなんだから多少の音は仕方ない」という考えにも、投稿者は理解を示しています。3万〜3万5千ドルの車なら誰も文句は言わないだろう、とも言います。ただ、販売店の上乗せで6万5千〜7万ドル、ときには8万ドル近くになる車となれば話は別です。投稿者は、これはトヨタがいつも満たしてきた水準ではないと述べています。

ハイブリッドオーナーの不安と、修理費の重さ

ハイブリッド車は上位グレードに多く、オーナーはより高いお金を払っています。それなのにリコールの対象から外されていることに、不公平感があるのは当然だと投稿者は言います。整備工場を営む立場から見ても、エンジンが壊れたときの修理費は大きな負担です。それに、そもそもエンジンを載せ替えるつもりでトヨタを買う人はいません。トヨタを選んだのは信頼性のためで、他メーカーの車で苦労してきた人ほどそうだ、と投稿者は強調しています。

トヨタに望むこと

投稿者は、トヨタのハイブリッド技術は2026年に一つの到達点に達し、完成度は非常に高いと評価しています。それだけに、V35Aの問題が全体の評判を引き下げていることを残念がっています。

投稿者が望んでいるのは、コンピューターの判定に頼らず、対象のエンジンをすべて交換することです。トヨタに損をしてほしいわけではなく、正しい対応をすればオーナーはまた信頼してくれるはずだという考えです。2027年モデルのタンドラも控えています。投稿者は、約束どおり品質が上がっているかを自分の目で確かめるのを楽しみにしているそうです。もし何も変わっていなければ、オーナーたちの声が届かなかったことになる。そう締めくくっています。

参考動画