「年間利益45億円のスマホファーム」は本当か 元・漫画村運営者の星野ロミ氏がTBS報道特集を検証

番組の「業界関係者」の話に疑問

漫画村を作ったことで知られる星野ロミ氏が、自身のチャンネルでTBSの報道番組を検証しました。2026年6月27日に放送された回で、SNSの閲覧数やいいねを人為的に増やす「スマホファーム」が取り上げられています。スマホファームとは、大量のスマートフォンを並べてまとめて管理する仕組みのことです。

星野氏は前回の動画で、Android端末20台でできたスマホファームを実際に買いました。運営している人への取材もしています。プログラマーとして長くグレーな分野に関わってきた立場から、放送内容が正しかったかを確かめたい、というのが今回の動画の狙いです。番組映像は引用の範囲で使っており、動画は収益化していないと断っています。

正しかった部分

星野氏は、番組を最初から否定しているわけではありません。たとえば次の点は事実だと認めています。

  • SNSの再生回数やいいねはお金で買える。Xのいいねを操作して話題を作る業者は実在し、星野氏も会ったことがある
  • 短い時間で100万インプレッションに届くこともありうる。Xのインプレッションは、ページにアクセスするだけで増えるからだ

星野氏によると、話がおかしくなるのはここから先です。

「18歳の代理店」が語った話

番組は、YouTubeの再生回数などを売るサイトにたどり着きます。そのサイトは、YouTube、TikTok、Instagram、X、note、Twitch、LINEのフォロワー数やいいね数を増やすサービスを売っていました。特定商取引法に基づく表記のページでは、会社名などが隠されていました。

取材に応じたのは、ファームの代理店だという18歳の人物です。東京の難関大学に通う理系の学生だと紹介されました。安全上の理由で施設は見せられないという条件付きでした。番組では次のような話が紹介されています。

  • 投稿から30分で1000件を超えるいいねを付けた
  • 1000円で100万インプレッションを提供した
  • 約10万枚のスマホ基板を並べた部屋があり、同じ規模の施設が茨城県内に4つある。費用は数十億円
  • 年間利益は約45億円

インプレッションといいねは別物

星野氏がまず引っかかったのは、100万インプレッションに対していいねは1000件ほどしかない点です。Xの仕組みでは、インプレッションはページを読み込み直すだけでいくらでも増やせます。いいねのほうは、1件ごとにアカウントが1つ要ります。つまり100万インプレッションを出せても、100万のアカウントを持っている証明にはなりません。いいね1000〜2000件くらいなら、星野氏の知り合いの業者でも用意できる数字だそうです。

40万台の実機を使う理由がない

星野氏が一番疑っているのは、約40万台の基板を使って数字を操作しているという話です。スマホファームを持って運用している人は確かにいます。ただ、いいねや再生回数の操作に実機はほとんど使わない、と星野氏は言います。理由は2つあります。

理由1:通信量と電気代が大きすぎる

実際のスマホでXのアプリを開いていいねを押すと、そのたびにデータ通信が発生します。100万回単位で閲覧数を増やそうとすれば、通信量はとても大きくなります。

プログラムから直接URLにアクセスする方法なら、認証などの対策はあるものの、通信量は100分の1から1000分の1で済むそうです。40万台を動かすなら、電気代も回線も相当なものになります。信用のない18歳や20歳がそんな規模の事業を立ち上げられるとは考えにくい、というのが星野氏の見方です。

理由2:1台で何千ものアカウントを動かせる

星野氏はXアカウントの販売業者に話を聞き、プログラムの中身まで見せてもらったといいます。その業者は、ある程度スマホファームを使っていると認めました。そのうえで、40万台も個別に用意する必要はないと答えています。1枚の基板で何千ものアカウントを管理できるからです。

番組で取材を受けた人物は「1台で1アカウント」と思い込んでいるのではないか、と星野氏は推測しています。仮に40万台がそれぞれ複数のアカウントを動かしているなら、アカウント数は4000万件規模になります。そうなると、プラットフォームによる凍結や検知との戦いになります。そもそも日本ではYouTubeの再生回数を買う需要がそれほど大きくない、とも星野氏は指摘しています。

「年間利益45億円」との矛盾

星野氏は販売サイトそのものも調べました。

  • アクセスがほとんどない:トラフィックを調べても、まともなデータが出てこない
  • 始まったばかり:サイトの更新履歴では、プロジェクト開始が2025年9月18日、本格運用の開始が2026年2月1日。放送の数か月前に動き出したばかりのサービスが、なぜ「年間」利益を言えるのか
  • よく似た別のサイト:ドメインから「jp」を抜いてアクセスすると、デザインの似たサイトが出てきた。ただしSNS操作とは関係がなく、AIで作ったような粗いサイトだった

決済手段もおかしい

YouTubeの登録者を5000人増やすプランは2万5000円で、1人あたり約5円です。支払いはSquareを使ったクレジットカード決済だけで、暗号資産には対応していませんでした。

星野氏によると、カード決済の会社はSNS操作のような商売を嫌います。年間1億円程度なら通るかもしれませんが、規模が大きくなると担当者の審査が入ります。10億円単位の決済なら、かなりの確率で止められるだろうとのことです。実際、この種の業者はカードを何度も止められているそうです。だから多くの同業サイトは暗号資産での支払いを受け付けています。カード決済だけで45億円を稼いだという話は、この業界の実態に合わない、というのが星野氏の主張です。

裏取りの方法はいくらでもあった

星野氏が一番問題にしているのは、番組が矛盾に一切触れず、「業界関係者」の話をそのまま流したことです。施設の映像は出せなくても、確かめる方法はあったはずだと星野氏は言います。

  • 暗号資産で受け取っているなら、その取引履歴を見る
  • カード決済を使っているなら、決済サービスの管理画面を見せてもらう
  • 40万台を持っているなら、購入時の領収書を確かめる。端末は多くの場合、中国の業者から買うので、その支払い記録を見る

技術面の問題もあります。自分の施設で40万台を動かしても、回線を契約しただけではIPアドレスが同じになってしまいます。数字の操作をするなら独自のプロキシを運用する必要があり、40万台分となれば費用はさらに膨らみます。星野氏の説明では、実際の操作はスマホの画面でいいねを押すのではなく、非公開の内部APIを通じて行うものです。番組でその話が一度も出なかったのは、取材を受けた人物がそもそも知らないからではないか、と星野氏は見ています。

星野氏の結論

星野氏は、この業者が嘘をついていると断定はしていません。ただし、嘘である可能性はかなり高いと見ています。理由は、サイトの作りが45億円を稼ぐ事業には見えないこと、そしてできて間もないサイトであることです。

証拠を見せずに「自分にはできる」と言う人の話をそのまま流すだけなら、陰謀論と変わらない。

星野氏はこうした趣旨で番組を批判し、事実を確かめるのはメディアの責任ではないかと問いかけて動画を締めくくっています。

参考動画